マイホーム購入をきっかけに2年住んだ賃貸物件を退去。
その際にハウスクリーニング代を請求されましたが「それは貸主が負担するものだ」と主張しました。
しかし、結局ハウスクリーニング代は満額を支払うことに(支払うことに納得した)。
本来は貸主が支払うべきお金を、常識だと思いこんで借主が支払っているケースが多々あると思いますので、この一件を通して感じたことを記します。
この後に詳述しますが、契約前や退去前には必ず国土交通省が示している「ガイドライン」を確認してからにしましょう。
結論
退去時の費用負担について特約に記載がある場合は契約前に対処する事が得策
結論から書きますとこの通りです。契約後では対応が難しいことが多いので、契約前に必ず特約の内容と国土交通省のガイドラインを確認しましょう。理由は下記に記します。
常識だと思っていた事は常識ではなかった
仲介手数料は家賃1ヶ月分支払う?
仲介手数料とは、契約が成立した際の不動産屋(仲介業者)への報酬のことです。
私は今まで4件の賃貸物件に住んでいましたが、そのどれも、契約時に1ヶ月分の仲介手数料を払っていたように記憶しています。
しかし、本来は下記のとおりガイドラインによって決められています。
・報酬の合計は賃料の1ヶ月分以内とする
これは、貸主と借主で合計して1ヶ月分ということです。
上記の原則があった上で、「どちらかの承諾がある場合は一方から0.5ヶ月分以上受け取れる」とガイドラインには書かれています。
これを知らないと1ヶ月分の仲介手数料が不動産屋から提示されても、当たり前のように契約(1ヶ月分支払うことを承諾)してしまいます。
退去時の現状回復は入居した時の状態に戻す事?
入居した賃貸物件が新しければ、なおさら新品に戻す事が当たり前だと思ってしまうでしょう。
まずもって「経年劣化」と「通常損耗」については借主が支払う必要はありません。
支払う義務があるのは、故意や過失によって賃貸物件を傷つけてしまった部分の修繕費です。これもガイドラインに示されています。
「経年劣化」とは、製品ごとに決められている耐用年数によって、年を経るにつれて価値が減っていくことです。
例えば、耐用年数が10年のものがあった場合、1年経つにつれ、価値が10%ずつ低くなっていきます。
つまり、1万円のもので耐用年数が5年だった場合は、新品交換から1年経過後は8000円の価値しかない事になります。
たとえ貸主が同じ製品に新品交換しても、1万円ではなく、最大で8000円しか請求できません。
「通常損耗」とは、普通に生活していて損耗していく(傷ついていく)事です。
これら「経年劣化」「通常損耗」部分は貸主が負担する事が原則となっています。
ですので、借主は故意や過失によって傷つけた部分を耐用年数に基づいて減価された金額、について支払う必要があるということです。
また、貸主は借主に請求の根拠を示さなければなりませんので、いつ新品に交換したものなのか、どの部分が通常損耗以上に傷んでいたのか、交換する製品の価格、交換する部分の面積等を書面や写真で提示してもらうように伝えましょう。
ハウスクリーニング代、鍵交換費用
これも原則は貸主が負担するべきものです。原状回復を超える部分の修繕は、次の入居者を得るための費用であり、貸主都合の修繕です。借主が負担するものではありません。
原状回復を超える部分の修繕費用は、家賃に含まれており、貸主が負担するものであるという考え方になります。
契約前に特約をチェックすべし
ここまでを振り返ると、退去時に借主が支払う費用は無いように思えます。
全くもってその通りです。通常損耗を超える傷を故意や過失でつけてしまった場合のみ支払う義務があるので、常識的に物件を使用して清潔に保っていれば、本来借主が支払う費用はありません。
そこで立ちはだかるのが「特約」です。
国土交通省が示すガイドラインに則って退去費用を算出すると、借主が負担する費用が発生しない場合でも、「特約」に記載があることで、借主が負担しなければならなくなります。
特約に記載されている内容を承諾し、契約を交わすと、契約自由の原則に基づき、基本的には特約に記載されている内容は有効となります。(消費者契約法の平均的損害の額から考え、法外な金額である場合は、特約が無効となる場合がある。)
私の場合
私の場合、特約に以下のような記載がありました。
〇入居期間中及び契約終了時の畳、建具、壁、床、天井、錠前等の修復・取替えの費用及び室内清掃費用は借主の負担とする
〇借主は退去時業者ハウスクリーニング代を負担するものとする
貸主が優しかったのか、知識がなかったのかはわかりませんが、幸いにもハウスクリーニング代のみ退去時に請求されました。
当初は、ガイドラインの通り、ハウスクリーニング代も貸主が負担するべきものだ、と主張しました。
しかし
〇特約に借り主が負担する旨記載されている
〇署名押印がある
〇具体的な金額が契約時に提示されていた
〇その金額もおおよそ平均的なクリーニング費用だった
という状況でしたので、請求された金額を満額支払うことにしました。
入居前に知識を身につけ対処できていれば、と悔やむばかりです。
まとめ
契約後に特約の無効を成立させるのは大変難しいです。
少額訴訟裁判で解決している事例もありますが、そこには時間も労力も割かなければなりません。
原状回復を超える部分の費用負担やハウスクリーニング、鍵交換費用について特約に記載されているか契約前にチェックし、契約前に対処することが一番楽で、損失も抑えられると思います。
ガイドラインに反する特約が記載されている場合は「この特約が無ければ契約します」とはっきり伝えましょう。
(ちなみに、ハウスクリーニングや鍵交換は具体的な金額が契約書や別紙に示されていなければ、契約後でも特約が無効になる事があるようです。)
これから賃貸物件を契約する方は国土交通省のガイドラインに目を通してから、特約をよくチェックして契約することをお勧めいたします。
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