2021年9月25日に信越トレイルが全線開通し、全長110kmのロングトレイルに生まれ変わりました。
私は学生時代アメリカの国立公園に興味があり、調べものをしていく中で、アメリカの国立公園やロングトレイルの文化を日本に広めようと活動している加藤則芳さんの事を知りました。
加藤さんの著書や闘病しながらの活動を拝見し、信越トレイルはいつか必ず歩こうと決めていましたので、今回の全線開通を期にスルーハイクに挑戦しました。
スルーハイク期間はアプローチを含め7日間(10月13日~10月19日)を予定していましたが、天候不良のため5日目でリタイアしました。
はじめに
- スルーハイクを検討している人にはEB(斑尾高原スタート)をお勧め
- トレイルは綺麗に整備されており、道を見失う可能性はほぼない
- NPO法人信越トレイルクラブが公表しているテントサイトには水場が整備されており、水の運搬に頭を悩ませなくて良い
0日目
EB(斑尾高原スタート)でスルーハイクしようと考えていましたので、まずは西の起点である斑尾山を目指します。
私の場合は、新潟県にある越後湯沢駅まで自家用車で移動。「南越後観光バス」で越後湯沢駅から長野県にある森宮野原駅へ、森宮野原駅から「JR飯山線」で飯山駅へ、飯山駅からは「コミュニティバス斑尾線」で斑尾高原まで移動するプランです。
出発予定が4時間ほど遅れましたが、なんとか越後湯沢から森宮野原駅へ向かうバスの最終便に間に合いそうで安心したのもつかの間、そこで靴を忘れてきたことに気づきました。
車を運転する時に履いてきたサンダルしかありませが、休暇の日程を考えると、靴を調達している余裕もありませんので、最終便のバス(17:05発)に乗り込みました。
森宮野原駅に到着したのは18時過ぎ。森宮野原駅から飯山駅までの電車は16:54が最終でしたので間に合わず、0日目は森宮野原で1晩明かすことにしました。
「道の駅信越さかえ」が駅から徒歩10分くらいのところにあります。サイクリスト用に屋根、机、ベンチがある休憩所がありましたので、そちらをお借りし21時頃就寝。
1日目
5:30起床。この日の行動予定は斑尾山山頂から赤池テントサイトまで(Section1)です。まずは、信越トレイル起点の斑尾山山頂を目指します。
森宮野原駅7:02発の電車で飯山駅へ、7:55に飯山駅着。コミュニティバス斑尾線の始発8:50のバスに乗り、終点の斑尾高原ホテルに9:20着。
斑尾山山頂はまだですが、アプローチトレイルということでここからスルーハイクの旅は始まります。
10月中旬ですが気温は高く、標高1000m付近にも関わらず20℃近くありました。紅葉は始まっておらず、暖かな陽気の中9:55斑尾山登山開始(私は同じ道を折り返すのが嫌でしたので大池登山口方面から登りました)。
斑尾高原スキー場のゲレンデがあるとおり、斑尾山の登山道は急勾配のところが多く、初日で大量の食糧と水を背負った状態では中々に疲れました。
11:03斑尾山山頂に到着(登山開始から約1時間)。ここから正式な信越トレイルのスタートです。
斑尾山山頂からはしばらく下りが続きます。大きなゲレンデのルートを1人のんびりと下り、万坂峠を経由して袴岳へ向かいます。
袴岳は斑尾山とは山容が異なり、ブナやコナラ等の広葉樹が広がる中、緩い傾斜の道を歩きます。
袴岳山頂までは30分ほど。その後は、信越トレイル1つ目のテントサイトである赤池テントサイトへ向かいます。
赤池テントサイトには、基礎がコンクリートで出来た綺麗な建物があり、清潔に管理されているトイレと水場があります。
ただ蛇口から出てくる水は生水のため、飲用や調理に利用する場合は浄水器又は煮沸が必要となります。
私は無駄に4Lも水を担ぎ上げてしまいましたが、赤池テントサイトに水場があるので、昼食に水を利用しなければ1Lも携行すれば十分かなと思います。
1日目の行動はここで終了。14km弱の行程で活動時間は3時間半程度でした。
このSection1は斑尾山登頂を除き、下り基調で緩やかな道が多いので体を慣らしながら歩く、ロングトレイルの1日目にぴったりのセクションでした。
2日目
2日目は赤池テントサイトからとん平テントサイト(戸狩温泉 星降るキャンプ場)までの約20kmの道を歩きます(Section2~3)。
6:30に赤池テントサイトを出発。のんびり30程歩くと沼の原湿原に出ます。朝もやの中、木道をトレッキングポールが心地よく叩きます。
毛無山、涌井新池と通り過ぎた後は、長い林道が涌井地域まで続きます。涌井には9:30頃着。
涌井から富倉峠、桂池と経由していきます。
富倉峠は、見晴らしが良く奇襲を受けにくいだけでなく峠道で水害にもあいにくかったため、上杉謙信が軍事上重要な道路として重宝していたそうです。
今は杉が植林され、見晴らしも良くないですし、人の往来は無いようです。利用が少ないせいかトレッキングルートは少し迷う部分もありましたし、何よりクモが多かったです。
ただ、人があまり入らないおかげか、5mほどの近距離でカモシカと遭遇することができました。
桂池には12時頃着きました。赤池から桂池までで約16km、行動時間としては5時間半程でした。
1泊目の宿泊地を桂池テントサイトに検討するかたもいらっしゃると思います。
バスを降りた斑尾高原ホテルから桂池まではおおよそ30kmくらいで、バスの始発に乗った場合、斑尾高原ホテルに到着するのは午前9:30頃です。
また、桂池テントサイトから次のとん平テントサイトまでは約5km、その次のグリーンパル光原荘までは約15km、その次の野々海高原までですと約32kmとなりますので、距離や時間も参考の上ご検討ください。
これは私個人の意見ですが、桂池テントサイトのトイレは潔癖気味の私にはきついものがありましたので、同様にトイレの清潔さを求める方には桂池テントサイトはお勧めいたしません。
桂池を後にし、本日の宿泊地であるとん平テントサイト(戸狩温泉 星降るキャンプ場)を目指します。
とん平テントサイト(戸狩温泉 星降るキャンプ場)には14:15分位につきましたので、本日は約20kmの行程で8時間ほどの行動時間でした。
とん平テントサイト(戸狩温泉 星降るキャンプ場)は控えめに言ってオアシスでした。管理棟の中には24時間いつでも入ることができましたし、清潔なトイレ、水、湯沸かしのポット、充電用コンセントなどが利用できます。
さらには、少し歩くことになりますが麓に戸狩温泉があり、疲れを癒せるだけでなく、商店や飲食店もあるので食も充実しています。
この日は温泉に入り、おいしいものを食べ、極楽な時間を過ごしました。
3日目
今日は野々海高原テントサイトまでの約27kmの道のりです(Section4~5~6)
この日は4:00出発。峠峠峠、アップダウンアップダウンアップダウンの連続でした。
また、豪雪地帯のため樹木が横方向に伸びて、トレイル上にかかっている木が多数あります。それを跨いだりくぐったりするのに体力を使い、27kmという距離以上に疲労を感じた日でした。
眺望が良いところはあまりなく、シングルトラックの道をひたすら上り下りする、といった印象です。道がぬかるんでいるところも多くあります。
ぬかるんでいるところには整備してくれている方が木の枝を渡しておいてくれたりしていますが、基本的にはどろどろになることを覚悟しておいたほうが良いと思います。
途中、伏野峠にはトレイルエンジェルからの水の差し入れが置いてありました。この峠を上り下りするSection4~6は水の補給場所が無いのでありがたかったです。
クーラーボックスの中には500mlペットボトルが十数本入っていました。もちろんゴミは自分で持ち帰ってくださいね。
野々海高原テントサイトに到着が16時頃。27km、12時間でした。
18時頃から雨風が強くなり、21時頃にはツェルト内に雨が入り込んでくる始末。翌日も1日雨予報で、気持ちよく旅はできないと判断し24時頃リタイアを決断しました。
4日目
24時頃に撤退を決意し、1時頃野々海高原テントサイトを出発。越後湯沢駅までのバスが出ている森宮野原駅までの約10kmを歩きます。
高原の広葉樹はきっと美しかったでしょうが、真っ暗闇の中、雨と風に耐えながら歩を進めます。
2時間で天水山山頂、そこから約2時間半で森宮野原まで下山してきました。
天水山からの下山道は急斜面なだけでなく、落葉もたくさんあるので、悪天候でなくても下山には注意が必要です。
今までの行程で2回くらいしか尻もちをつきませんでしたが、この下山道で5回ほど転げました。
森宮野原に着いたのは5:30頃。途中撤退は悔やまれましたが、残りはSection8~9~10の舗装路メインのエリアと苗場山登頂を残すのみでしたので、次の機会に回すことにします。
ツエルトと寝袋が雨に濡れ、雨具の下の衣類もびちょ濡れ、これらを考慮して、残りの信越トレイルを楽しく歩ける気がしなかったので、リタイアもやむを得ません。
森宮野原8:40始発のバスに乗り、越後湯沢へ帰りました。
最後に
- Section1~3は途中に川が流れている場所があるので、浄水器さえあれば比較的少ない水(1L前後)があれば足りると思います
- Section4~6はトレイル上に水場がありませんので、注意してください
- 全長110kmは斑尾山山頂から苗場山頂までの距離ですので、「信越トレイル踏破日数+トレイル起点までの移動日(前後1日)」くらいの余裕をもった計画が良いと思います
- 構想を形にしてくださった加藤則芳さん、NPO法人信越トレイルクラブのみなさん、関係自治体、地元のみなさん、ボランティアのみなさんに感謝
私はスルーハイクできませんでしたが、私の記録が少しでも計画の参考になれば幸いです。
次は信越トレイル装備の記事を書こうと思います。
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